物語とは何か

物語とは何か?


複数の人形に囲まれていると、
ふと、私が人形が観ているのか、
それとも私が人形に観られているのか、
主−客が逆転した奇妙な感覚に襲われる
ことがある。


物語もそれと同様である。
あまりに物語に囲まれすぎると、
私が物語を演じているのか、
それとも私が物語を演じさせられているのか
よくわからない混乱に陥ることがある。


私が生きているのであり、物語はその媒体に過ぎないのか?
それとも物語が生きているのであり、私はその媒体に過ぎないのか?


物語とは、「想い」のデータベース化である。
故人の「プログラム」であるとも言える。
いったん誕生すると、それはすぐさま我々に内面化される。
我々が望むか望まざるかに関わらず、それは・・・。


神話、文学、哲学、体験記、童話、法文。
「想い」が「想い」を生み、それはますます我々を拘束する。


人間は過去を忘却しない。
人間は物語の誕生とともに忘却の孤独から解放された。
物語を通して「想い」は後世に生きつづける。
その「想い」こそが後世に様々な「呪い」を残した。
この文章もそう。


「自己=想い」を記憶媒体に保存しようとするところに
物語の本質はある。そして、その「自己=想い」が後世の
人間を操作しているところに物語のもうひとつの本質がある。